◇本書から (延原泰子訳 早川 2010)
『リーバスは運転席側の窓を開け、涼しい風を心地よく感じながら走った。アウキテラーダーへの最短ルートを知らないが、キンロスからグレンイーグルズ・ホテルへ行けることはわかっていたので、そちらに車を向けた。
二ヶ月前、カーナビを買ったのだが、まだ説明書を読んでいないのだ。カーナビは空白の画面のまま、助手席に転がっている。そのうち、車にCDプレーヤーを取り付けてくれたガソリンスタンドへ持っていくつもりだ。
後部座席やトランクを探してみたのだが、ザ・フーのCDが見つからなかったので、エルボウを聴いている。シボーンお勧めのバンドだ。アルバムのタイトル曲《リーダーズ・オブ・ザ・フリー・ワールド》が気に入り、それをリピートにしている。ヴォーカルが、60年代以後に世の中がおかしくなった、と歌っていた。リーバスも、別の観点から同じ結論に達していたので、同意したくなった。しかしヴォーカルはもっと変化を望んでいるのだろう。グリーンピースや核兵器廃絶運動が支配する、貧困とは無縁となった社会の到来を。』--COMMENT--
リーバス・シリーズ第7作は、エジンバラでG8会議が開かれ、警察上層部が捜査を止めさせたがったいるなか、シボーンと執拗に連続殺人犯を追う怒涛の一週間を描く。
相変わらずの登場人物の多さ、複雑な利害関係、一向に犯人像が明らかにならない、会話・ディテール描写の巧みさなど読み応えのある作品になっている。
引用は冒頭で殺人現場に向かうシーン、リーバスのいつものベントレーGT…最後のあたりではサーブにも乗っている。地元ギャングの紺色のベントレーGT、G8関係者用のアウディA8など。(2011.6.20#691)
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